秘密の恋は1年後

「妻と社内恋愛をしていた頃や、その前の日々をおふたりや麻生さんに重ね見てしまったんです。緊張させるつもりはなかったんですが……すみません」
「あはは、そうですか。あれから奥様はお元気ですか?」
「ええ、おかげさまで。先日退職しまして、今は日々、家のことをよく頑張ってくれています」

 納得した様子の尚斗さんと、和やかに話し出す。
 立花さんは店員に注文を入れていて、私は終始この場に早く馴染もうとするので精いっぱいだった。

 てっきり、立花さんも既婚だと思っていたけれど、絶賛恋人募集中らしい。
 和装の似合う素敵な彼なら、きっとすぐにいい相手をつかまえそうだと思った。


 三時間ほど食事をしながら交わされたのは、社長同士の難しそうな会話。
 でも、それはほんの少しで、だいたいはプライベートな話から、気心知れた男性同士のやりとりだった。
 それも私には新鮮で、彼が普段どんな人たちと交流して、どんな話をして帰ってきているのか、その一端を見せてもらえたようで安心できた。

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