秘密の恋は1年後

「そういえば、社内に公表する予定は考えていますか?」

 先日、姉には予期せぬタイミングで打ち明けたけれど、それまでずっと黙っていたのは心苦しかった。
 だけど、会社に公表するのは訳が違うのだから、よく考える必要があると思う。


 飲み足りないのか、尚斗さんがブランデーをグラスに注いで、ソファに座った。
 私も冷緑茶のグラスを手に、隣に座る。


「俺はいつでもいいよ。今まで隠してきたのは、お前のためだ。仕事が楽しいなら、働きやすい環境であるべきだからな」
「でも、やっぱり尚斗さんのタイミングがあると思うんです」
「なくはないけど、気にしなくていい。なにがあろうと俺の嫁になるんだから」

 私の髪を指先で梳く彼は、ゆっくりとブランデーを飲んで、ふっと息をついた。

 俺の、嫁……。
 その響きにドキッとさせられて、グラスを両手で持ったまま少し俯く。

 本当に、尚斗さんの奥さんになるなんて、まだ実感がない。彼女でいることもやっと馴染んできたばかりなのに。

< 315 / 346 >

この作品をシェア

pagetop