秘密の恋は1年後
横に延びる内廊下を歩く間、住居の玄関と思われるドアは見当たらない。
手を引かれるまま右の角を曲がると、ようやくアルコーブが見え、彼はドアの鍵を開けた。
「ただいま」
その第一声で、予感が的中したと確信する。
きっとこの前の女性が、いつも出迎えているのだろう。
しかも、今夜は社長が私を連れて帰っても、少しも浮かない顔なんてせず、温かくもてなしてくれたりして……。
彼にはそんな素敵な女性がぴったりだと、勝手に想像してはつまらない気持ちになる。
せっかくの夜だから、着飾ってメイクも完璧にして、楽しみにしていた自分が馬鹿みたいだ。
「尚斗さん、おかえりなさい」
パタパタと軽快なスリッパの音を立てながら、この前見た女性が廊下の奥からやってきた。
「はじめまして、麻生と申します」
「千堂結衣です。いつも尚斗さんがお世話になっております」
挨拶をして頭を下げた私は、彼女が千堂姓を名乗ったので驚いた。
公にしていないだけで、ふたりはもう婚姻を結んでいるのだろうか。