秘密の恋は1年後

「どうぞお上がりください」

 生成りのスリッパを出してくれた結衣さんは、きっちりメイクをしていて華やかな雰囲気だけど、前髪があるからか若々しく感じる。

 枝分かれしている廊下にはいくつもドアがあるようで、マンションの一室とは思えないほどだ。
 社長はバッグを置きに自室に入ってしまい、私は結衣さんのあとについていく。


「わぁ……」

 通されたリビングと、大開口の窓の向こうに見える代々木公園の木々が目に鮮やかで、感嘆の声が漏れた。
 開放的な印象のリビングは、ブラウン系の濃淡が上手く使われた統一感のある家具もセンスがよく、結衣さんが立つアイランドキッチンだけでも六畳以上はあるように思われる。


「素敵なご自宅ですね」
「ありがとうございます。麻生さんはどちらにお住まいなんですか?」
「吉祥寺です」
「大きな公園があって、私も好きな街です」

 彼女は、私とふたりになっても少しも動揺していないようだ。

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