秘密の恋は1年後

 二十一時過ぎにブルーメゾンを出て、汐留の社屋に戻った。

 優羽には、ここで一夜明かすのを禁止されたけど、たまに会いたくなるヤツがいる。


「アルパー、元気かー?」
「フーンフーン」

 以前、社長を務めていたグループ企業の一角に、アルパカの飼育スペースがある。
 そこに放牧しているアルパカたちが、次々に俺の元に集まってきた。

 なかでも、人懐っこくてかわいい顔をしているアルパは、俺の大事な相棒だ。
 起業してから、いろんな愚痴を聞いてもらったし、客に無理に付き合って酔った夜も、もふもふの触感で癒してくれた。


「なぁ、アルパ。千堂の秘密知ってるか?」
「フーン」

 ……知ってるっぽいな。


「社内恋愛してるらしいけど、聞いた?」
「フーン」
「秘書の誰か?」
「フフーン……」

 違うのか。となると、社長職に就く前後でやりとりのあった相手だろう。

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