秘密の恋は1年後

 秘書以外で、異動の時期にやりとりをするのは、人事部か。
 他の部署は日頃から業務でかかわるけれど、その時期にピンポイントで話すきっかけがあるのは、人事部の可能性が濃厚だ。


「ありがとう、アルパ。また遊びに来るからな。お前も彼女と仲よくしろよ?」
「フーンフーン」

 意思の疎通ができていると感じると、ますます愛着がわく。
 親会社にアルパたちを連れていきたかったけど、父に大反対されたから諦めた。でも、いずれは……。




 ――後日。


「千堂、ちょっといいか?」
「はい」

 エレベーターで偶然乗り合わせた千堂をつかまえて、エントランス階にあるソファに誘った。


「井浦社長、なにかありましたか?」
「そうなんだよ、大アリなんだよ」

 仕事のことで失態があったかと考えを巡らせている様子の千堂を眺め、俺は少しいい気分だった。
 優羽との交際を見破られた過去があるから、その仕返しと言ってもいいだろう。


「立花さんには紹介したのに、俺には挨拶もないなんて、どういうつもりだ?」
「……!!」

 頭のいい彼は、すぐに察したようだ。

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