秘密の恋は1年後

「そんなに面白かったですか?」
「まさか兄弟揃って同じことを言われるとは思ってなかったので、つい」

 話を聞いていた様子の結衣さんが、調理の合間にリビングに来て、私と反対隣りに座る。
 彼女は、茹でて青々としたアスパラガスにアンチョビガーリックのソースを添えたプレートを置き、自然と愛斗さんのグラスにビールを継ぎ足した。

「お付き合いしていた頃、いつから好きだったのか白状させられたんです。それで、主人は社内のアイドル的存在で女子社員全員が憧れていたから、目の保養だって打ち明けたんですよ」
「そうだったんですね。でも、納得です。ご兄弟、よく似てますし」
「でしょう? 麻生さんも早く尚斗さんと付き合っちゃえばいいのに。誰かに盗られちゃうかもしれませんよ?」

 夫婦揃って、にこにことしながらやたら急かしてくる。

 私と社長が恋人同士になるなんて、現実的じゃないしあり得ないと思っていたことだ。
 悪い冗談が好きなのも、兄弟の似ているところなのかな。真に受けず、この場は笑って流すしかない。

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