秘密の恋は1年後

「麻生さん、お付き合いされている方はいらっしゃるんですか?」
「いえ、おりませんが……」
「じゃあ、尚斗でいいじゃない! どうかな? 尚斗には興味ないですか?」
「いえ、決してそんなことは……。むしろ私なんかに社長は勿体ない方で」

 愛斗さんがぐいぐいと推してくる。
 よっぽど自慢の弟なのだろう。その気持ちには心の底から同意できるけれど、ここで私の想いを知られるわけにはいかない。


「ただいまー」

 玄関の方から聞こえた社長の声に、背筋がピンと伸びる。
 まさかこんな話をしているタイミングで帰ってこなくてもいいのに……。


「噂をすれば、ってやつだな」
「私、お出迎えしてきますね」

 結衣さんがすかさずソファから腰を上げ、またしてもスリッパの音を軽快に鳴らしながらリビングを出て行った。


「麻生さんが来てるの知らないから、びっくりするだろうなぁ」

 愛斗さんはいたずらっ子のように微笑みながら、グラスのビールを飲んで寛いでいる。

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