秘密の恋は1年後

 一時間ほど経って、お暇することにした。
 結衣さんは、また来てくださいと言ってくれたけれど、やっぱり仲のいい夫婦の家にお邪魔するのは気が引ける。
 またなにか用事があった時にでも、会えたらいいなぁ。


「下まで送ってくる」
「社長、ここで大丈夫ですよ?」
「いいから。俺がそうしたいの」

 玄関で見送る夫婦に頭を下げ、社長に背中を押されるままエレベーターの前へ。
 添えられていた手は自然と離れ、彼はスラックスのポケットにしまった。


「あの、本当にここでいいので、お気遣いなく……」
「本気で言ってる? さっきの返事、もらってないんだけど」

 和やかだった食卓の雰囲気に紛れ、忘れてくれていたらと願ったけれど、それは叶わなかった。

 ほどなくしてエレベーターが到着し、ふたりきりになってしまった。
 脈を打つような鼓動の音が、少しずつ大きくなってくる。


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