秘密の恋は1年後

 三階からはあっという間にロビー階に到着し、彼のあとについて歩く。
 コンシェルジュに丁寧にお辞儀をされ、恐縮しながらマンションを出た。


「お邪魔しました。お兄さんと結衣さんにも、改めてよろしくお伝えください」
「ん、わかった」
「……では、失礼します」
「返事、もらってないけど?」

 上手く逃げようと思ったのに、彼は返事をするまで帰してくれないようだ。
 こうして見送りに出てくれたのも、そのためなのだろう。


「社長は、本気なんですか?」
「当然」

 間髪入れずに答えが返ってきて面食らう。
 彼にとってはそうであっても、私にとっては意外でしかない。
 三月まで特に面識もなく、人事関係のやりとりでようやく話せる機会を持てただけで、まだ日は浅いのに……。


「……どうして私なのでしょう?」

 考えながら問いかける言葉は、まさに私の本心だった。

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