クールな社長の耽溺ジェラシー
「ま、ちょっと残念なことは……あのまま閂にいたら小夏と働けたのにな、っていうことくらいか」
「私と?」
「ああ、社内恋愛をして……もっと早く付き合っていたかもしれない」
思わせぶりに細められた黒い瞳に明かりが点々と映り込んで、夜空みたいに見えた。
「早く、小夏に触れたい」
甘さと熱をたっぷりと孕んで囁かれ、触れられてもいないのに頬が火照りだした。
「そ、そんなこと言われても……」
私だって触れたいし、抱き締められたい。
キスの感触が蘇ってきて慌てて視線を逸らすと、広瀬さんが大きなジェスチャーで私を手招いていた。
「こなっちゃん! いま、ちょうど明かりついてるし計測しておいたほうがいいかもよ」
「わ、わかりました」
叫ぶように呼ばれ、頭が切り替わる。
そうだ、仕事をしているのに新野さんとの甘い時間を味わっている場合じゃない。
「いってこい。いい仕事にしないとな」
「はい!」
背中を押してくれる新野さんに笑い返し、計測器を手にすると、光源へ駆け寄った。
「ここもよし、っと」
建物のそばで計測し、書類に数値を書き込んでいると中から人が出てきた。細いヒールをコツコツと鳴らし、それだけでいい女だと感じさせる歩き方だ。
「へぇ、高そうな女」
「高そうって」
普通“いい女”と言わないだろうか。せっかく作業に集中していたのに気がそれてしまった。