クールな社長の耽溺ジェラシー
「先日はどうも失礼しました。……へぇ、建築関係のお仕事してるんですね。もしかして、照明ですか?」
「そう、ですけど」
美人というよりおっかない。
ヘルメットをかぶった頭の先からスニーカーを履いた爪先まで、スーツを着こなしてパンプスを履いた高羽さんにじっくりと見られる。
この前に続いて二度目の値踏みはさらに居心地が悪かった。
「そっかぁ、同じお仕事をしているからなんですね」
「どういうことですか?」
「照明っていう同じ話題があるから、楽しいって言ってたんだなぁって納得しました。新野さんって基本無口じゃないですか。共通のものがあると話に困らないし、楽しく感じたんでしょうね」
赤い唇がにっこりと弧を描き、きれいの称賛を浴び続けてきたであろう笑顔は、私には悪魔の微笑みに見えた。
じわじわと心が暗いもので塗りつぶされていく。
「新野さんって、べつにあなたじゃなくてもいいんですよ。私も共通の話題見つけて頑張ります」
そう言い残すと一礼して去っていった。
ぼんやりとした頭の隅で、ヒールの音がフェードアウトしていく。完全に聞こえなくなると、やっと息ができた気がした。
「そ、そういうこと……?」
でも、好きだって言われた。付き合ってほしい、とも。
新野さんの言葉を信じたいのに、急に目の前が真っ暗になってきて、もともとなかった自信がさらになくなってきた。
呆然と立っていると、新野さんが駆けてきて、私の顔を覗きこんでくる。
「さっき、なにか言われたのか?」
様子をうかがう瞳には心配の色が浮かんでいた。
大丈夫、新野さんはちゃんと私を大切に想ってくれている。そう感じるのに、どうしてだか胸騒ぎがして落ち着かない。
「いえ、平気です。あ、広瀬さんが呼んでますね。行きましょう」
余計なことを考えている暇はない。いまは仕事中なんだから。
新野さんと自分の想いから目を背けると、仕事に没頭することにした。