クールな社長の耽溺ジェラシー


まちなかライトアップの企画は施工に入って手がかからなくなり、私たちはほかの仕事に時間を割くことが多くなった。

しばらく手をつけられていなかった経費申請などを淡々と片づけていき、新しい現場の設計をする。

正司さんと広瀬さんは橋のライトアップの打ち合わせをしているらしく、さっきから姿はない。

大きな窓の向こうでは日が傾きはじめている。これからすぐにライトが必要な暗さになる。秋の夕方は短い。

今日は現場へ行くこともなさそうだし早めに帰れるな……と思っていると、デスクに置いていたスマホが鳴った。画面に表示された名前に、心臓が大きく跳ねる。電話は新野さんからだった。

「お、お疲れさまです」

なんの用件かと考えるよりも、話ができるという嬉しさが先回る。

≪お疲れ。いま、大丈夫か?≫

「はい、会社に戻ってますので。どうかしたんですか?」
≪ひとつ確認したいところができて。ちょうど閂の前にいるんだけど、時間あるか? 模型使って、確かめたい≫
「わかりました。会議室押さえますので、受付通ってきてください。あ……わ、私ひとりですけどいいですか?」
≪ああ、問題ない≫
「そ、そうですか」

私だけふたりきりということを意識してしまっている。

電話を切ると、パソコンでイントラネットに入り、空いている会議室を探した。

ふたりだけなので狭くていい。けど、簡易的な部屋だと外からの明かりが漏れてくるので、きちんとした部屋がいい。

ちょうど小さい部屋が空いていたので、新野さんにLINEで階と部屋番号を伝え、私は総務にカギを借りに向かった。


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