クールな社長の耽溺ジェラシー


「こういう敷居が高いお店っていつもの私なら緊張するんですけど、新野さんが照明をデザインしているからかすごく落ち着きます」

天井のダウンライトはテーブルを温かく照らし、室内をほどよい明るさに保っている。

「肩肘張らない和のフレンチを……って依頼されたからな。その通りにできたならよかったよ」
「新野さんの作品はどれも優しいですから。人を和ませる力があります」

本人はパッと見た感じだと無愛想だけど、深く関わるとただ自然体で裏がない人なんだと気づく。

だから、一緒にいると居心地がよくて作品のように落ち着くことができるんだ。

「いつか、私にも“私らしさ”ができるといいんですけど」
「大丈夫だろ、小夏はすでに小夏らしい」
「そうですか? あんまり個性ないですけど」
「そう思ってるのは自分だけだ。あと何年かしたら、たぶんわかってくるよ」

何年か経ったら、私も新野さんと同じような仕事ができるのだろうか。

そんな想像はできないけれど、そのときも彼にはそばにいてほしいと願った。

ほどなくして運ばれてきた料理は、ホワイトアスパラのムースの優しい味からはじまり、金目鯛のカルパッチョやスモークサーモンとそば粉のクレープ巻きは素材が生かされていて、エゾアワビのポワレや牛肉のステーキは舌が蕩けるようにおいしく、味わったことのないものばかりだった。

食事をしていると外はすっかりと暗くなり、中にはにはホタルと天の川を思わせるライトが点いている。奥行きを意識したライティングは空間を広く見せ、よりリラックスできた。

「やっぱり好きだなぁ……」
「俺? 照明?」
「っ、それは……」

どっちも。

「あ、デザートはなんですか?」
「はぐらかすなよ」
「だって、もう答え知ってるじゃないですか」

新野さん自身も照明も好き。それは言わなくてもたぶん伝わっている。

「言ってもらいたいもんなんだよ」

そう言いながらも諦めたのか、クスリと笑うとデザートを教えてくれた。


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