お見合いだけど、恋することからはじめよう

「やっぱり、お見合い結婚の『先輩』の朝比奈さんに相談したいなぁ……聞いてくれます?」

あたしは朝比奈さんの方を向いて言ったのに、

「なになになに?……早く言いなさいよっ」

大橋さんが身を乗り出す。めんどくさい人だ。

彼女の前にはローソンで買ったと思われる「たまごとコロッケ」のランチパックとマチカフェのコーヒーがある。

えっ、いつも数千円のランチを食してる彼女の今日の昼ごはんがこれ?

あたしの目線に気がついたのか、

「来月のカードの引き落としが大変なのよ。ボーナス一括払いがあるの」

大橋さんは顔を(しか)めた。

「大橋さん、まずマイボトル買いましょうね。
コーヒーとかペットボトルとか毎日買ってるでしょ?」

朝比奈さんが女神さまのように神々しく微笑んで、大橋さんにアドバイスし始めた。

ちなみに、朝比奈さんのマイボトルはサーモスとスタバとのコラボの春限定「SAKURAシリーズ」のもので、あたしのはサーモスとアフタヌーンティーのコラボ商品だ。コンビニで買うペットボトルと同じサイズの五〇〇ミリリットルである。

だけど……なんで、そんな話になるのっ?
……まずい。話を戻さなければ。

「アマゾンでもロハコでもステーショナリーネットでもいいから、気に入ったデザインがあればポチッとしてください」

つい、早口になってしまう。
だって、この調子だったら、お昼休憩が終わってしまうもん。


「……で、聞いてください。
うちの父親、金融庁のキャリア官僚なんですけど……」

< 23 / 530 >

この作品をシェア

pagetop