お見合いだけど、恋することからはじめよう
「……もおっ、水くさいわねっ。わたしのこと、『誠子』って呼んでいいわよ」
……いやいやいや。呼べませんって。
あたしはぷるぷるぷる…と左右に首を振った。
「で…でも、水野さんの気持ち、わかる気がするかも。わたしなんか、ちゃんと勉強した最後の記憶は幼稚園のお受験なんだから」
さすが、朝比奈さん。話を戻してくれた。
「彩乃……『七海』よ。
わたしたち、秘書室の三人しかいない女子社員じゃない。他人行儀はやめましょう」
大橋さんが諭すように言う。
……どの口が言う⁉︎
だけど。
「あ…彩乃さん……」
あたしから思い切って朝比奈さんを「彩乃さん」と呼んでみた。
この際、余計なことはラララ星の彼方だ。
お昼休憩の終わりの時間が迫っている。
どうしても、聞きたいことがあった。
「副社長って、確かKO大を出てケンブリッジまで卒業してますよね?
彩乃さんたち、普段はどんな話をしてるんですか?おバカなこと言ったら、副社長から呆れられたりしません?」
あたしは、すっかり前のめりになっていた。
「そうよ、七海……その調子よ」
大橋さんが「ひろみ」ではなく「ななみ」に向けて、お蝶夫人のように大上段から肯いていた。