お見合いだけど、恋することからはじめよう
南青山の会社近くにあるこのスペインバルは、先月の「同期会」で友佳と青山と三人で呑んだ店でもある。
……要するに「会社御用達」のお店っていうことだけれども。
あたしはふと、つき合っていた半年の間に、赤木さんと食べに行ったお店を思い浮かべた。
印象に残っているのは、福岡から東京に進出してきた博多ラーメンの店に行ったときのことだ。
彼はスープを一口すすって『こがん味ば地元ん味やなか』と吐き捨てるようにつぶやいた。
確かにそのお店はあっさり系の豚骨スープだったが、あたしにはじゅうぶん満足のできる「旨か」スープだった。
そして、彼が気に入って絶賛するのは決まって、おどろおどろしいほどこってりと「進化」した豚骨スープだったのだ。
諒くんみたいに、フードパークの豚骨ラーメンを気に入って『今度は海鮮丼を食べにフードコートへ行こう』なんて、
……絶対にありえないだろうなぁ。