一円玉の恋
と、完全に人を馬鹿にしている男に食ってかかった。それでも男は、

「ふーん。じゃあさ。貧乏学生に愛の手をって事で、アンタに募金してあげるよ。コツコツ貯めれば、モヤシと豆苗くらいはいっぱい買えるかもよ。じゃあ、有り難く受け取って下さい。」

と、悪びれもせずニヤニヤ笑いながら言ってくる。

なんだってぇ⁈このヤロー。もう、もう、ぶちっぎれだー。

「人を馬鹿にすんな!アンタからの施しなんて誰が受けるか!バカヤロー」

と、男が提げてる買い物袋に、お金を無理矢理ねじ込んで、ふんっ!と男を睨みつけて、その場を立ち去った。

「おお、怖っ!若いのに、カルシウム足りてないんじゃない。」

と去り際、私の後ろ姿に向かって男が言葉をかけた。

うるさいわ!アンタなんか嫌いだ!
もう来んな!絶対来んな!
顔見ただけで吐き気がする。
もう二度と会いたくない。

怒りに任せてズンズン歩く。
ズンズン歩くズンズンと。
アパートまでまっしぐらだ。

あー。着いた。なんかもうどっと疲れた。
早歩きしていい運動にはなったよね。
さてと、部屋に入って、やる事やらなきゃ。
と、上の階に行く為に外階段の一段目に重い片足を乗せた。

「へえー、やっぱり。アンタここに住んでる子なんだ。ここら辺でちらっと見かけたりはしてたんだよねぇ。本当いかにもって感じだよねぇ。このアパート。ここってお風呂あるの?もしかして、トイレは共同とか?今どきの女の子でも住んでる子っているもんなんだね。」

なっ⁈んで!いるの⁈
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