一円玉の恋
「あんまり、学校でも、男の人とはそこまで話しませんよ。それに、バイトで忙しいですし。あっ、でも、ゼミの先輩は仲良くしてくれてました。映画見に連れて行ってくれたり、ご飯行ったり。結構趣味も合うんで色々誘ってはくれるんです。けど、先輩が就職してからは、なかなか時間が合わなくて、連絡だけはやり取りしてるんですけどね〜。」

「…へぇー」と言って杏子さんは、山神さんに目を向ける。
私もつられて見ると、本気で理由が分からないが、さっき収まったはずの黒いものが出てる。出てる。
それに結構怖い。怒ってる。
なんでよ!どこにあんのよそのスイッチ!

杏子さんは、意味ありげにニヤニヤしてる。

「ねぇ、じゃあ、その先輩の事はどう思ってるの、好き?嫌い?」

「えっと、よく分からないです。考えた事ないんで、好きか嫌いかで考えたら、多分好きの方だと思います。」

ダンッ!と山神さんが飲み干したグラスを乱暴に置いた。
やっマジ怖いんですけど。
自分が暴れてるじゃない!

「じゃあ、その先輩から、付き合って、って言われたらどうするの?」

「そんな事言われないですよぉ〜。」ナイナイ。

「いや、仮に、の話しでよ。」

「うーん、付き合うっていまいち分からないんですよね。今までの関係でいいのなら、アリなのかなぁ。でも、先輩は私をそんな風に見てないと思います。
でも、憧れはありますよ。純粋に私だけを見てくれる人がいいなぁと思います。
私も純粋にその人しか好きにならないので。
遊んでる人とかは絶対無理!
大人の恋とかは遠慮しときます。
ただ純粋に思ってくれる人…うーん。いつか、会えるといいんですけどね。」
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