カラダから、はじまる。

ホテルのエントランスまで出ると、母はタクシーの運転手にキャリーバッグを預けた。
そのキャリーバッグを後ろのトランクに入れてもらっている間に、ポーターの手を借りて無事父をタクシーの後部座席に押し込むことができた。

「七瀬、二次会に行っても、おとうさんみたいにこんなに呑むじゃないわよ?」

母がタクシーに乗り込みなから言う。

「わかってるわよ」

わたしは口を尖らせて言った。

「……七瀬」

不意に、父の声がした。

「えっ、なに? まさか……吐きたいの⁉︎」

わたしはギョッとして咎めるような口調になる。

「あらっ、イヤだっ、おとうさん、ガマンできないの⁉︎ タオルはキャリーバッグの中なのにっ⁉︎」

母は悲鳴をあげたが、ふと私の首元を見た。

「あ、七瀬、ちょうどいいわっ、そのショール貸しなさいっ!」

「えぇーーーっ、イヤよぉっ!
これ、すっごく気に入ってるんだからっ‼︎」

わたしは発狂しそうなくらい叫んだ。

「七瀬……」

「きゃあぁっ、おとうさんっ、待って待ってっ!」

仕方なく、わたしはしゅるるっと首に巻いたショールを(ほど)いた。


「おまえが嫁に行くのは……もうちょっと、先にしてくれ」

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