カラダから、はじまる。

今日の七海は朝からとにかく忙し過ぎて、顔を合わせてもろくに話もできなかった。

「おつかれ、七海……改めてだけど、結婚おめでとう。真っ白なウェディングドレスも、お色直しのオレンジのドレスもとっても似合ってたよ。
かわいくて……すっごく綺麗だった」

わたしは微笑みながら、妹に告げた。
自然と、穏やかな笑みになっていた。

「うん、ありがとう。おねえちゃんは本当に思ったことしか言わないから、そう言ってくれてうれしいよ。お世辞じゃないもんね」

七海はふふっ、と軽やかに笑った。
その笑顔の(きら)めきが、今のささくれ立ったわたしの心には眩し過ぎる。

「おとうさん、大丈夫だった?
お酒を呑んであんなにふらふらしてるの、初めて見たんだけど?」

七海は二次会への支度があったため、後ろ髪を引かれるような気持ちで両親を見送ったのだった。

「わたしも初めてよ。タクシーに乗っけるまでがたいへんだったわ」

ホテルのふかふか絨毯をルブタンのピンヒールで長身の父を支えて歩いた辛さを思い出して、わたしは顔を(しか)めた。

「ごめんねぇ、おねえちゃん」

七海は目の前で手を合わせた。

「ほんとにそうよ。わたしなんか、おとうさんから『おまえが嫁に行くのは……もうちょっと、先にしてくれ』って言われたんだからね」

わたしはわざとらしく睨んでやった。

「ええっ、うそっ、ほんとにっ?」

七海は大きな瞳をこれでもかと見開いた。


「……七海」

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