カラダから、はじまる。

「ねぇ、七瀬さん……僕の名前、知ってる?」

高木がわたしの顔を覗き込むように訊く。

「えっと……『真澄』……くん?」

なんとなく、呼び捨てにするのは気が引けたので「くん」を付けてみた。

「……………」

彼がいきなり無言になった。

「……真澄くん?」

もう一度、呼んでみた。

「……………」

なのに、無言のままだ。

「ちょっとぉ、名前を呼ばせておいて返事しないのって、ひどくない?」

わたしは口を尖らせて、文句を言った。

すると、彼の目が一瞬見開かれたかと思うと、その顔が急降下してきて、尖らせたわたしのくちびるを(ついば)んだ。

「あなたが『反則』なことばかりするから、もう僕の我慢も限界だ。それに、賢いくせにとんでもなくバカな七瀬さんが、絶対に素直に言うわけないことも、よくわかった」

……え?

「だから、もう僕らは心が通じたんだと見做(みな)して……キスすることにする」

なぜか苦り切った顔で彼はそう宣言すると、ふわりと開いたわたしのくちびるの隙間に、自分の舌を()じ込んできた。

そういえば、わたしたちのカラダはずーっとつながっているのに、キスだけはまだしていなかった。


……って、それよりもっ。

また、わたしのこと、いきなりディスったわね⁉︎

< 165 / 167 >

この作品をシェア

pagetop