カラダから、はじまる。

三年ほど前、突然、七海が激痩せしたことがあるのだが、あれは絶対にオトコ絡みだったと思う。
激痩せする直前が、姉の目から見ても空前絶後の「かわいさ」だったからだ。

あのとき、七海は人生で最高潮(マックス)の恋にどっぷり浸かっていた、と見た。
そして、どんな経緯(いきさつ)があったのかは知らないが、真っ逆さまに底辺まで()っこちてしまったのだ。
当人はなんにも言わなかったけれども、本当に辛そうだった。

この件に関してわたしと母とは「共通見解」だった。だから、ずいぶん心配もした。
母は何度も『辛かったら、会社なんていつでも辞めてもいいのよ?』と言いかけた。
七海の交友関係で彼氏ができそうなのは、会社以外には考えられなかったからだ。

もしかしたら、そういうこともあって、父にお見合い相手を頼んだのかもしれない。
すっかり吹っ切れた「今」のタイミングで。

……やっぱり、さすが教師。

わたしはわたしで、「うちの大事な七海」をそんな目に遭わせたオトコを、すぐにでも殴り込みに行きたい気持ちだった。

だが、父だけは能天気にも七海の『ダイエット中なの』という言葉をすっかり鵜呑みにしていた。

なので、『おとうさんはそんなにガリガリに痩せてるよりも、以前のようなぷっくりしていた七海の方がいいと思うぞ』という不用意な発言をしてしまい、『あたしがいつ「ぷっくりしていた 」っていうのよぉっ⁉︎ おとうさん、サイテーっ!』と七海の逆鱗に触れるどころか鷲掴みにしていた。


……「訂正」したところでめんどくさくなるだけだから、放っておこう。

たぶん、この件に関しても母とは「共通見解」だと思う。

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