触って、抱いて、もっと愛して。臆病な令嬢は貴公子の一途な熱情に蕩かされました(原題「その身体に触れたら、負け」)
「そうじゃなくて!」
紅茶とともに供されたスコーンにはアプリコットのジャムが添えられていたけれど、口にしても甘みが感じられない。「今日はとことん甘い物を口になさいませ」とエマがはりきって用意してくれたというのに、なぜだろう。
そのエマはあの王宮への訪問の後、「お嬢様を泣かせるような男はこちらから願い下げです!」と息巻いていた。
──相応しいも何もないのに。
「フレッド様とは終わったことだもの。私の出る幕はないわ」
言付けを残して帰って以来、彼からは何の連絡もなかった。わかっていたこととは言え、そのことは彼女の胸を抉った。
「何があったか知らないけれど、それはきっとフレッド様の本心じゃないはずよ。あんなに仲睦まじかったじゃない! お願いだから結婚は思い留まって」
リリアナが淑女にあるまじき勢いで、スコーンにかぶりつく。とたんにむせる友人を微笑ましくさえ思いながら、オリヴィアは立ち上がり彼女の背中をさすってやった。
「ヴィオラ殿下は間違いなくフレッド様に好意をお持ちだわ。二人の会話を聞いてしまったの。……とても親密そうだった。陛下も殿下のことはたいそう可愛がっておられたし、殿下が望めばきっと二人の婚約は近いうちに整うわ」
王女が相手では一介の貴族令嬢が敵うはずもない。王女の思い通りに婚姻が決まるだろう。
オリヴィアは叶わない想いを葬るしかなかった。
紅茶とともに供されたスコーンにはアプリコットのジャムが添えられていたけれど、口にしても甘みが感じられない。「今日はとことん甘い物を口になさいませ」とエマがはりきって用意してくれたというのに、なぜだろう。
そのエマはあの王宮への訪問の後、「お嬢様を泣かせるような男はこちらから願い下げです!」と息巻いていた。
──相応しいも何もないのに。
「フレッド様とは終わったことだもの。私の出る幕はないわ」
言付けを残して帰って以来、彼からは何の連絡もなかった。わかっていたこととは言え、そのことは彼女の胸を抉った。
「何があったか知らないけれど、それはきっとフレッド様の本心じゃないはずよ。あんなに仲睦まじかったじゃない! お願いだから結婚は思い留まって」
リリアナが淑女にあるまじき勢いで、スコーンにかぶりつく。とたんにむせる友人を微笑ましくさえ思いながら、オリヴィアは立ち上がり彼女の背中をさすってやった。
「ヴィオラ殿下は間違いなくフレッド様に好意をお持ちだわ。二人の会話を聞いてしまったの。……とても親密そうだった。陛下も殿下のことはたいそう可愛がっておられたし、殿下が望めばきっと二人の婚約は近いうちに整うわ」
王女が相手では一介の貴族令嬢が敵うはずもない。王女の思い通りに婚姻が決まるだろう。
オリヴィアは叶わない想いを葬るしかなかった。