触って、抱いて、もっと愛して。臆病な令嬢は貴公子の一途な熱情に蕩かされました(原題「その身体に触れたら、負け」)
「白状するとね、恐れ多いことだけれど殿下に嫉妬したの。仕方ないって言い聞かせようとすればするほど、羨ましくて悔しかった。前にもこんな気持ちになったことがあるけど」

 アイリーンのことでもやもやとしたときとは比べものにならなかった。いくつもの叫びが胸の中でこだまする。オリヴィアは胸を押さえた。

 どうしてあの人の隣にいるのは自分じゃないんだろう。どうして王女なんだろう。

 どうして好きになどなってしまったんだろう。

 あんなことがなければ妻になれるはずだったのにと、父親をも責めそうになるのを押さえるのに精一杯だった。

 単純に彼が心変わりしただけのことなのに、それを受け入れられない自分。

 心は抑えようもなく醜く淀み、顔を背けたくなって。

「苦しかった……」

 リリアナがはっとしたように、涙目で振り返る。

「でも、フレッド様の……好きな人の幸せを祝えない自分も嫌で」

 一つだけ幸いだったのは、彼に会わずに引き返したことだと思う。あのまま踏み込んでいたら、自分が醜い愁嘆場を演じずに済んだか自信がない。

 オリヴィアはとん、とリリアナの肩を叩く。

「私も結婚すれば、これ以上みにくい気持ちを持て余さずに済むと思うの。それに……フレッド様も安心してくださるかしらって」
「安心?」
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