その身体に触れたら、負け ~いじわる貴公子は一途な婚約者~ *10/26番外編
「まずは見た目でお相手をひきつけなくちゃ話にならないわ。それで溺れるくらいたくさん愛してもらうのよ!」

 ようやく解放され、彼女はソファに座り直す。リリアナの勢いに、思わずくすくすと笑い声を漏らした。

 着飾ることは難易度が高い。着飾った自分を褒めそやされても、それが色めいたものになれば、とたんに怖気づく自分が容易に想像できる。想いを寄せた相手にさえ身体を差し出すことを拒んだのに、他の男性にそれができる自信もまだない。

 それでも、たとえ着なくても仕立てるくらいなら良いかもしれない。オリヴィアも飾りが嫌いではないのだ。仕立てるだけで気分も上向くかもしれない。

 手にしたティーカップを戻し、オリヴィアは息巻くリリアナに笑いかけた。

「ねえ、私のお相手がフレッド様でなくなったからといって友人をやめないでくれる? 私、あまり友人がいないものだから」
「そんなの当たり前よ! それに自慢じゃないけど、ここだけの話、私もあまり友人は多くないんだから」

 リリアナがようやく笑ってくれる。オリヴィアも微笑んでスコーンを口にした。もう冷めてしまったのに、さっきよりは甘く感じられる気がする。二人で次々にスコーンを口に運んだ。

 
 お互いに少しだけ目尻に涙が浮かんでいることには、気がつかない振りで。
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