その身体に触れたら、負け ~いじわる貴公子は一途な婚約者~ *10/26番外編
 挙式を無事に終え、場所を庭に移して祝いの席は続く。誰もが笑顔で二人を祝い、御馳走と酒と会話を堪能する。カトラリーを扱う音、たえまなく上がる笑い声、陽気な音楽。空を飛ぶ鳥の鳴き声さえも二人を祝うように明るい。

 公爵家のパーティーでありながら格式ばったところのない、にぎやかであたたかいガーデンパーティーだ。

 夫婦になった二人は出席者の前でファーストダンスを披露する。純白のドレスが蝶のように舞い、見つめ合う新郎新婦はたとえようもないほどの幸福を噛みしめる。

 ……と思いきや、実際のところ新郎は少々御機嫌斜めのようだ。

「オリヴィアが先に御父上のところに駆け寄るなんて、計算外だったな」
「フレッド様?」
「こら、オリヴィア。様はいらないって言ったよ?」
「あ、はい。……フレッド。さっきのことをおっしゃっているのですか?」

 さっきとはもちろん、フレッドが父親を連れてきてくれたときのことだ。

「うん。いや、別に御父上でも構わないんだけど、今日、僕は晴れてきみの夫になったのだし、今日ぐらいは……」
「もしかして拗ねてらっしゃるの?」
「拗ねては……いや、正直に言うとそうだな」

 どうやらこの夫は、オリヴィアが夫より先に父親に抱きついたのが不服らしい。
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