触って、抱いて、もっと愛して。臆病な令嬢は貴公子の一途な熱情に蕩かされました(原題「その身体に触れたら、負け」)
王都にあるグレアム公爵家のタウンハウスに馬車を横付けにすると、ほどなくしてオリヴィアに出迎えられた。

「お帰りなさい、フレッド。今日はいかがでしたか?」

 フレッドがどれだけ遅くなろうと、決まって使用人ではなくオリヴィア自身が外まで迎えに出てくれる。いつもフレッドが馬車から降りるのも待てない様子で、顔を輝かせて駆け寄ってくるのだ。見るたびに心の中で愛しさを新たにする瞬間である。もちろん、ただいまの口づけは真っ先に終える。

「今日は上々だよ。新しい議案も通ったことだし、国防の施策も徐々に成果が上がってきているからね」

 オリヴィアに贈る宝石を注文したのは、誕生日当日まで内緒なのだ。フレッドは上機嫌でオリヴィアを伴うと、屋敷へ入るべく玄関へ向かう。ところが明かりの下まで来て、見覚えのないドレスにどきりとして足を止めた。

 訝しんだからではない。

 それは、夏の空を思わせるきっぱりとした空色のドレスだった。袖と裾はたっぷりと膨らみ、そのどちらにも繊細なチュールが重ねられている。良く見るとチュールには、純白の花が刺繍されていた。

「……そのドレス」
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