触って、抱いて、もっと愛して。臆病な令嬢は貴公子の一途な熱情に蕩かされました(原題「その身体に触れたら、負け」)
「僕はこの婚約を破棄する気も、白い結婚をする気もないけどね」

 サイラスが噴きだした。

「変わったな、フレッド」
「そうかな」
「ああ、俺は嬉しいよ。お前がとうとうたった一人の女性を見つけたんだと思うと感慨深いね。オリヴィア嬢の『氷』を溶かす男に乾杯だな」

 サイラスがニヤリと口角を上げ、二人は軽くグラスを持ち上げた。

「ところでこの結婚はフリークス卿からの申し入れなんだってな?」
「知っているのか。だが政略結婚にしては、フリークス卿の目的がわからないんだが」

 フレッドが眉を寄せると、胡桃を口に放り込んだサイラスがややあってから口を開いた。

「おそらく卿の狙いはうちの家……国防に関しても大きな権限を持つ、宰相家さ」

 フリークス卿ははじめ、息子をサイラスの妹と政略結婚させる気だった。ところが、コーンウェル公はその申し出を斥けたという。

「だから卿は君に目をつけた」
「どういうことだ? 話が見えない」
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