触って、抱いて、もっと愛して。臆病な令嬢は貴公子の一途な熱情に蕩かされました(原題「その身体に触れたら、負け」)
 サイラスが神妙な顔で、二杯目のウィスキーをグラスに注ぐ。

「いいか、フレッド。俺たちは、ロースクールでも一、二を争う成績の持ち主であり親友だ。卿はその関係を利用しようとして、オリヴィアという持ち駒をぶつけたんだ」
「つまり、卿はアルバーンの家にではなく僕自身の交友関係に興味があったと?」
「ああ。最初にお前を取り込んで、そこから俺や宰相家に近づくつもりだろう」
「回りくどいやり方だな」
「卿も打つ手がなくなっているということだろう。なりふり構わないってやつだな」
「なぜそこまでしてフリークス卿はコーンウェル公と繋がりを得たいんだ?」

 サイラスの表情が不穏なものに変わる。場所を移したのはこの為だったのかとその表情から察せられた。

「知っているか? フリークスの領地には国王軍が駐屯しているが、それ以外にもあの家には私兵が配置されている」

 フレッドは頷いた。以前オリヴィアに領地を案内してもらったときに、聞いた覚えがある。

「その私兵が増強を繰り返しているんだ」

 現在、アルディスと隣国リデリアの関係は表向き良好である。そのため国王軍の編成も変わっていない。領内で深刻な諍(いさか)いが起こっている節もない。にも関わらずフリークス卿が私兵を増やすのはなぜなのか。

「……まさか」
「ああ、そのまさかだよ。父上はフリークス卿の謀反を疑っている」
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