触って、抱いて、もっと愛して。臆病な令嬢は貴公子の一途な熱情に蕩かされました(原題「その身体に触れたら、負け」)
「リデリアからの侵犯は昔から頭の痛い問題だったが、卿からはその報告が上がらない。もし卿が隣国と結託していたらどうなると思う? 王都から離れたあの領地で兵が立てば、またたくまに国王軍は壊滅する」
「だが卿に謀反を起こす動機があるとは思えない」

 眉をしかめたフレッドに、サイラスが苦笑する。

「まあな。ただ収穫祭で報告を受けた、今年のフリークスからの納税額は例年より少なかった。あそこは例年、ユナイ川のおかげで他の領地よりも収穫には恵まれているはずなんだ。それなのに少ないということは、謀反ではないにしろ、何かあるのは間違いない」

 辺境伯の治める領地は国防が絡むため、他の領地とはその重要さが格段に違う。だからこそ爵位も伯爵より上なのである。隣国まで絡むきな臭い話に、フレッドは腕を組んだ。

 とてもではないがオリヴィアに話せる内容ではない。あの泣き顔をさらに曇らせるようなことはできない。

「それで、だ。フレッド。お前に頼みがある」

 サイラスが真剣な顔をした。

「オリヴィアを探れというのなら、断る」
「親友に愛しい婚約者を探らせる気はないさ。なに、ちょっとした手伝いってやつだよ」

 サイラスがにやりと口の端を上げて、空になったグラスを振る。氷がカラカラと威勢良く鳴った。
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