触って、抱いて、もっと愛して。臆病な令嬢は貴公子の一途な熱情に蕩かされました(原題「その身体に触れたら、負け」)
「泣いた? それとも寝不足かな。まぶたが腫れてる」
「やだ、見ないでください。ちゃんと隠したはず……」
「隠しても、僕にはわかるよ」

 顔色の悪さは白粉でごまかしたので、誰にも気づかれない自信があった。さきほども、他の出席者から笑顔でいることを皮肉られたくらいなのに。

 オリヴィアは自分を叱咤して微笑んだ。

「……おじ様には気づかれていないといいのですけど。良くしていただいているのに」

 今度はフレッドを真正面から見つめ、オリヴィアは話題を変えた。

「父の件では御迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。父はどうしておりますか? 父こそ、あまり食べていないのではないでしょうか。普段からそんなに食べる人ではありませんから」
「きみの御父上はしっかりした方だよ。不便は感じておられるだろうが、取り調べにも落ち着いて対応しておられた。食事も取っておられるよ」
「そうですか。良かった……」

 オリヴィアはほうと息を吐いた。父親が捕まってから、連絡の取りようがなく、ずっと気にかかっていたのだ。

「父はいつ戻ってこられるのでしょう? それにアランが、寄宿学校で嫌な思いをしていないと良いのですが……家のことで」
「御父上のことはなんとも言えないが、弟君は確か僕の後輩だったかな。あそこは風紀に厳しい先生がおられるから、弟君のことは心配しなくていい。寮監の娘に見初められない限りはね」

 フレッドの冗談に、彼女は小さく噴きだした。自分を安心させようとしてくれる心遣いが泣きたくなるほど嬉しい。
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