一途な2人 ~強がり彼氏と強情彼女~
休み明けで出勤すると、店長から設楽さんの手伝いをお願い、と指示されてビジネス書のコーナーへ向かった。

設楽さんは私と同い年。同期だからお互いに知ってはいたんだけど、話をしたのは3か月前に設楽さんがこの店舗に転属になってからだ。
身長170cm近い、すらっとした長身で、長い黒髪ストレート。
絵に描いたような美人さんで、気安く声をかけられないくらい高尚なオーラを纏っているけれど、話してみると意外にお茶目さんでそのギャップがまた素敵。
彼女目当てに、わざわざ店舗まで出向いてくる出版社の営業も多いらしい。

設楽さんはビジネス書の担当。
「ビジネスなんて全然わかんないのにさ、どこの店舗でもこれ担当させられちゃうのよねー。」
とこぼしていたこともあった。
彼女の容姿が、そう連想させるのがから仕方がないような気がする。

「設楽さん、手伝うよー。」
「佐々木さん、おはよう。助かるわー。」

設楽さんの傍らにある台車には、ハードカバーの本が山積みになっていた。
大規模な新刊が出るようで、それを並べるために他の本を寄せてまとめて、の作業中らしい。
1冊1冊はそうでもない本も、大量になると重くかなりの重労働。
これはどこに?と聞きながら黙々と作業を続ける。

それによって出来上がったスペース。書棚のサイドの部分、店舗のメイン通路に面している絶好の場所。
「こんなに広くスペース取るなんて、随分大規模なプロモーションするんだね。」

映画の原作とか、文芸書だとこれくらいのスペースを取ることはたまにあるけれど、
ビジネス書でこういう展開は初めて見た。

「これこれ、今話題のイケメン社長の本よ。」

設楽さんが差し出した本はのタイトルは

”豊沢 彬のワークライフバランス”

スーツを着て、壁に背中を持たれかける彼の姿が
表紙になっていた。
< 11 / 135 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop