一途な2人 ~強がり彼氏と強情彼女~
演劇部の公演始まっちゃうよーと言いながら去って行った彼女たち。

もう、ここから出て行っても大丈夫のはずなのに、
体が動かない。
妙な注目を浴びていたのはこれが理由だったんだ。


世界の豊沢の総領息子である彬くんが、女の子を連れていたから。


この学校に通ってるし、高級住宅街に住んでるし、なにより穏やかな物腰や優し気な態度には育ちの良さが滲み出ているし。
良家のお坊ちゃまってことは分かってたんだけど。


格が、違いすぎる。


彼女たちが言っていた、彬くんと私では’身分が違う’というのは、
嫌味でも蔑みでもなく、

事実だ。

この学校に通う彼女たちでさえ、彬くんとは対等な関係ではないのだ。
私なんて足元にも及ばない。


何で、気づかなかったんだろう。
あの雰囲気、豊沢という苗字。
気づけるきっかけなんていくらでもあったはずなのに。

もっと早くに気付いていれば、風変りな金持ち息子だなー
なんて思うくらいで済んだのに。

好きになってから知るなんて、

両想いだと確信してから知るなんて、

遅すぎる。
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