一途な2人 ~強がり彼氏と強情彼女~
その後よろよろと彬くんの元へ戻り、
吹奏楽部のコンサートを聴きに行ったけど、心ここに非ず状態で
彬くんが話しかけてくれていても耳に入らない状態だった。

事実を知る前は一緒にいることが楽しくて、
冗談を言い合ったりも出来たけど、
知ってしまった今では、そんなことできない。

気安く話したりできる相手ではないのだから。


人は皆平等、って学校では教わる。


私だってそう思うし、差別とかはいけないことだと思う。
でも育った環境や経済状態は当然、考え方や価値観にも大きな影響を与える。

彬くんは世界に誇る日本の大企業の御曹司。
対する私は公立通いの母子家庭育ち。
学費免除で通える大学に合格できないと、進学は難しいんじゃないかって思ってる。


そんな私たちに、共通項なんてあるのだろうか?


「さぁーちゃん大丈夫?具合悪い?」
 
体育館を後にしてからも押し黙っている私に、彬くんが尋ねた。
心配そうに私の顔を覗き込む。
「ちょっと疲れちゃったから、そろそろ帰ろうかな。」
「うん、わかった。」

そんな、残念そうな顔をしないで。
離れるのがつらくなるから。

「僕、片付けとかもあるから送っていけないんだ。ゴメンね。」
2人とも無言のまま校門のところまできて、彬くんが口を開いた。

「ううん、大丈夫。ありがとう。」

平静を装いながらも、まだまだ混乱している私。
きっと私の異変には彬くんもとっくに気づいている。
それでもあえて気づかないふりをしてくれているのも、彼の優しさなんだろうか。

「じゃあ、また図書館でね。」

早く家に帰りたかった。
こんな、夢みたいな非現実的な空間から
早く逃げ出したかった。
< 18 / 135 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop