一途な2人 ~強がり彼氏と強情彼女~
翌週土曜日、迷いを抱えながらもいつも通り図書館へ行き、
いつも通り過ごした。
彬くんも一緒。

良家のお嬢様たちとは違い私のような一般人が彬くんに対し粗相があっても影響なんてないのだから、今までのまま気軽に付き合っていけば良いのだという思いと、
そうは言っても所詮住む世界が違う、将来のない関係を続けて傷つくのは嫌、という思いが順番に心を支配する。

普段は物事を迷いなくあっさり決めるタイプの私が、
こんなにも戸惑いを感じるのはきっと
今まで、恋をしたとこがなかったからだと思う。

当然だけど、その日はほとんど勉強には集中出来なかった。

図書館からの帰り道。
いつも他愛のない話を振る私が押し黙っているので、無言のまま歩く。
その沈黙を破ったのは意外にも彬くんだった。

「知ってるんだね、僕の事。」

何を、という言葉なんてなくても分かる。
そして、私が分かるということを、彬くんも分かってる。

「うん、この間の学校祭の時に聞いちゃった。」

「そっか。」

お互いに顔を見ることが出来ずに、前を向いたまま歩く。

「今まで、知らなくってゴメンね。
私、失礼なこと言っちゃったりしたと思うし・・・それに、あんなボロアパートに上げちゃったりして、本当にごめんなさい。」

これが私のの真意なのか、それともあくまて御曹司という立場の相手に述べた建前なのかはもう、自分でもわからなくなっていた。

急に彬くんが立ち止まり、私を見据えていた。

「皆、僕のことを知ると態度が変わるんだ。
でも、さぁーちゃんだけは違うんじゃないかって思ってた。」

雰囲気はいつものように優しく穏やかなのに
どこか冷たさを帯びている。
他人を寄せ付けないような、拒絶しているかのような。


この時気づいたんだ。
私は、彬くんが御曹司という事実を知って驚愕し遠慮してしまっていたけど、
そんな私の態度の変化は、彬くんを傷つけていたんだ。
私は自分のことで頭がいっぱいで、彬くんの変化には何も気づいていなかったんだ。
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