一途な2人 ~強がり彼氏と強情彼女~
「さぁーちゃん。
今でも、僕の事好き?」

そう聞かれた私は、素直に「好き」と答えることが出来なかった。
もう、世の中の道理がわからないような子供じゃない。

ここで好きと答えて、両思いでいられたとしても、
この先ずっと、この関係が私の心をかき乱し続けることは間違いない。
受験にだって絶対に影響が出る。

この関係を続けるか否かなんて、天秤にかけなくても明らかだった。

心は決まったはずなのに、返事ができないのは
私の想いの強さのせいだと思う。

もう会えない、終わりにしたいなんて言葉は
嘘でも言いたくなかった。

「さぁーちゃん、僕・・・」

彬くんが何かをいいかけた時突然、猛スピードで近づいてきた高級車が私たちの横で止まり、運転手が駆け下りてきた。
このマークは知ってる。ベンツだ。

その運転手は彬くんの耳元で何かをささやき、それを聞いた彬くんの顔が一瞬にして青ざめた。

「さぁーちゃん、今日はここで失礼するね。」
「う、うん。」

きっと一大事なんだろうな、っていうのは明らか。

「また連絡するから!」
運転手が開けたドアから車に乗り込む寸前、彬くんがこちらを振り返って言った。

「うん。」
と返事をしたけれど、きっと彬くんには聞こえていない。

一体何だったんだろう!?と考えたのは一瞬だけ。
私が一緒にいた人は、そういう人なのだ。
運転手付き高級車だって当然だろう。
なにか一大事があって、迎えが来た。
むしろどうして今まで歩いてたの?

< 20 / 135 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop