恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
(なに、なんなの?)
二人の前に立ち、剣を抜く飛龍。その体の脇を数本の矢が通りすぎていく。何本かは飛龍の剣がなぎ払った。
鳴鈴は恐怖でその場に立ちすくむしかできない。
矢は飛龍や鳴鈴の体にこそ当たらなかったものの、衣の袂や裾を切り裂いた。そのたびに鳴鈴の寿命は縮まりそうになる。
「殿下をお守りしろ!」
護衛たちが声を張りあげる。武器を持って一斉に矢が飛んできた竹林の方へ踏み込んでいくとすぐ、複数の足音が遠ざかっていくのが聞こえた。
「あきらめたようだな」
飛龍が鳴鈴を抱き寄せる。その広い胸に頬を預け、鳴鈴は震えていた。
池に落とされたと思ったら、今度は弓矢で襲撃された。敵はどこからか、自分たちを見張っているのだろうか。
「早く王府へ戻ろう。行くぞ!」
戻ってきた男たちで荷物を積み、鳴鈴たちを乗せた馬車は一気に星稜王府を目指した。