恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「欲しいのか」
「え? う、えと……」
「奥さん欲しいネ。でも旦那さんに遠慮してるネ」
ぐいぐい割り込んでくる商人を無視し、飛龍が言う。
「本当にこれでいいのか。別の色のやつもいるぞ」
あちこちに置かれた鳥かごを、鳴鈴はくるりと見回す。だけど、目の前の頬紅を塗りすぎたようなマヌケな小鳥がどうも気に入ってしまった。
「この子がいいです」
「そうか。小鳥ならいいだろう」
貴族が鳥を飼うことは珍しくない。飛龍は鳥かごごと、つがいで小鳥を買った。
重い鳥かごは飛龍が持つ。その後も日持ちしそうな焼き菓子を侍女たちのお土産にと買い込み、いつの間にか二人とも両手いっぱいに荷物を持っていた。
「ありがとうございます、殿下。こんなにたくさん」
「お前にまで持たせて悪いな」
「平気です。あ、馬車が見えてきました……」
緑礼たち、星稜王府の列が見えてホッとした瞬間、馬車の影からヒュッと何かが飛び出した。鳴鈴が持っていた布袋が破れ、ぽろぽろと菓子が零れ落ちる。
「敵襲だ!」
飛龍が叫ぶなり、護衛の兵士たちが剣を抜く。緑礼が鳴鈴に駆け寄る。飛龍は緑礼に鳥かごを渡し、他の荷物を地面に放った。