恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
徐家は皇室ほど強大でなくとも、翠蝶徳妃の遠い親戚ということで、それなりの地位がある。
自分の領地を持たない皇子や、貴族の末弟など、いわゆるごくつぶしを婿に迎える家も、女児にしか恵まれなった家庭には少なくない。
次の結婚もしようと思えばできるだろう。しかし鳴鈴は勢いよく首を横に振る。
「嫌よ」
抱かれなくたって、受け入れてもらえなくたって、やっぱり飛龍が好きすぎて。
いくら大事にしてもらえても、他の男じゃ意味がない。
「意地を張るのはやめましょう」
「そんなんじゃないわ」
「じゃあ何なんですか。そんなに星稜王が好きなら、余計に悔しくないんですか。悲しくないんですか。辛い恋なんて捨てて幸せになりましょう。花の命は短いんですよ」
他人の目には鳴鈴は哀れで、可哀想で、辛いだけの恋をしているように見えるだろう。しかし彼女自身はそうは思っていなかった。
「たしかに辛いこともある。でもね、私は殿下をこんなに好きになれて良かったわ。彼と居るだけで幸せなの」
「彼のせいで泣いてばかりいるくせに?」
緑礼が目を細めて鳴鈴をにらむ。
「うん……そうね。私、泣いてばかりいる。でも、殿下を恨んで泣いたことはないの。殿下が好きだから泣くのよ」