恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「ちょ、ちょっと待って。どうして殿下と離縁しなきゃいけないの」
緑礼の言葉に驚き、鳴鈴は彼女の前にすとんと座る。覗き込んだ緑礼の顔はいつも通り涼し気な美人だ。そして、冗談を言っているようには見えなかった。
「どうして、ですって? 決まっているじゃないですか。結婚してからちっとも、あなたが幸せそうじゃないからです」
決然と言い放たれた言葉に打たれ、しばし反論を忘れる。それをいいことに、緑礼は自分の思いを遠慮なく吐き出した。
「ここにいたら、刺客に狙われ続け、いつまでも処女妻のままで、侍女に蔑まれ続けるんですよ。それでいいんですか? 私はそうは思えません」
どうやら緑礼は鳴鈴が泣いていた件で、侍女たちを問いただしたらしい。
ちなみに、乱心した侍女は鳴鈴の悪口を言っていた侍女だったとか。彼女は薬師の対応が早かったおかげで、一命をとりとめた。しかしまだ目を覚まさず、眠り続けている。
もう少し解毒が遅れていたら、心臓が止まって死に至っていたかもしれないと薬師は言った。
「お妃さま、いえ、鳴鈴お嬢様はまだお若いし、可愛らしい。早くこんな家とはおさらばして、もっとお嬢さまを大事にしてくれる家に嫁ぐべきです。それがだめなら、お婿さんをとればいい」
緑礼はそこまで一気に言って、深く息を吸って吐いた。