恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
鳴鈴は猛烈に後悔していた。雨の中、あんな風に飛龍を責めるのではなかった。彼は自分を守ろうとしてくれていただけなのに。
浮気の証拠ではと疑っていた翡翠の耳飾りも、雪花のものだった。彼がそれを捨てられるわけなかったのだ。
「ごめんなさい。私、そんなことだとは知らなくて」
しょんぼりとうなだれると、飛龍は彼女の頬を包み、上を向かせる。
「謝ることはない。辛い思いをさせて、悪かった」
謝る飛龍に、ふるふると首を横に振る鳴鈴。
「仲が悪くも良くもない夫婦を演じてきたつもりだが、それほど功を奏さなかったな。結局お前も俺も、こうして命を狙われている」
「怖いこと言わないでください」
「実際そうだろ。だからもう、無駄に気を使うのはやめることにする」
どういうことかと聞こうとした鳴鈴に、ふっと飛龍が顔を寄せる。
びっくりした彼女が目を大きく開けた瞬間、二人の唇が触れた。
口づけされたと鳴鈴がやっと理解すると、飛龍は離れていく。彼女は大きな目でまばたきもせず、彼を見つめた。
「仲良くしててもそうでなくても恨みを買うなら、仲良く暮らした方がいいに決まっているよな」
「は、はあ……」
「とりあえず、今宵は口づけだけにしておこう。怪我が治り次第、夫の務めを果たすことにする」