恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
一段高くなった牀榻の前に座った鳴鈴の横に、飛龍が腰かけた。それだけで鳴鈴の肩はびくりと震える。
鳴鈴はちらりと横にいる飛龍を見た。申し合せたように鳴鈴の方に顔を向けた飛龍と目が合う。
飛龍が照れくさそうに微笑む。鳴鈴もそれに答えるようにはにかんで笑った。
「改まると緊張するな」
香草を入れた湯にでも浸かってきたのか、飛龍の体からいい匂いが立ち昇っているような気がする。
「はい、緊張します」
素直にうなずいた鳴鈴に、飛龍は苦笑を漏らす。
「だが、もう待てない。悪いな」
飛龍は立ち上がり、鳴鈴を抱き上げて牀榻に上がった。褥の上に鳴鈴を横にすると、顔にかかった髪を、頬を撫でるように優しくよける。
「私の方が、何か月も殿下をお待ちしていたのですよ」
「ああ、悪かった悪かった。それはもう水に流してくれ」
初夜から飛龍に背中を向けられ、その後一度も同衾することなく、周りに白い目で見られてしまった。
今夜に至るまで、色々と悩んで苦しんできた鳴鈴としては、いたずらに蒸し返すことはせずとも、簡単に忘れることはできない。