恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「やだあなた可愛いわね」
侍女が持ってきた菊の花を浮かべた酒を受け取り、ころころと笑っていた令嬢は再び鳴鈴に耳打ちした。
「男として、役に立たなくなるってことよ」
聞いているうちに意味がわかって、鳴鈴は赤面した。黙ってうつむく鳴鈴に小麦色の令嬢は酒をすすめる。
「私、鄭宇春(テイ・ウシュン)」
「あ、私は徐鳴鈴……です」
「よろしくね、鳴鈴。あなたと義理の姉妹になれたら楽しそう」
ふたりとも皇子の妃になれば、同時に義理の姉妹になれるということか。
(宇春って素直で明るいけど、ちょっと……積極的すぎるような気が……)
この子が王宮に入ったら、味方も多そうだけど同じくらい敵を作りそう。鳴鈴はそんなことを思いながらうなずいた。友達は多いほうじゃない。気さくに話してくれるのはありがたい。
「鳴鈴さま、失礼いたします」
緑礼が近くに寄り、そっと鳴鈴に耳打ちした。
今日はやけに耳打ちされる日だ。
と、そんなことを思っている場合ではなくなった。
翠蝶太妃が鳴鈴を呼びだしたというのだ。顔を上げると、皇帝の妃たちも皇子たちも食事を終え、庭の散策に出始めている。