恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「足手まといとはそういう意味じゃない。お前がいると、戦に集中できないんだ」
「殿下……」
鳴鈴を抱きしめた飛龍は、彼女の耳元で囁く。
「お前といると、穏やかな気持ちになれる。お前を傷つけられたら、冷静な判断ができなくなる。戦場でそれでは、他の兵たちが困ってしまう」
自分を傷つけないように言葉を選んでくれているのがわかり、鳴鈴はますます申し訳ない気持ちになった。
「絶対に無事に帰ってくる。心配するな」
「ええ……」
飛龍はいつだってそう言う。でも年下の鳴鈴にだってわかっていた。
この世に、”絶対”と言い切れることなどないのだと。
鳴鈴は溢れてくる涙を必死で堪えた。泣いてしまっては、まるで飛龍が死ににいくと言っているようではないか。
「おい。とりあえずはただの調査だと、主上も言っていただろ」
肩を震わせる鳴鈴を励ますように、飛龍が頭を乱暴に撫でる。
「でも、敵と会う可能性だってあるじゃないですか。その可能性が高いから、殿下でなければいけないのでしょう?」
「そりゃそうだ。しかしあまり悪い想像ばかりしないでくれ。現実になってしまいそうだ」
そう言われれば、鳴鈴は口を閉ざすしかない。黙った鳴鈴の体を反転させ、飛龍は微笑む。