恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「誰も言ってくれないから、勝手についていくのです」
「やめてくれ。足手まといだ」
ハッキリ言われ、鳴鈴は衝撃を受けた。たちまち泣きそうになる。
「わかっています。でも、でも……殿下と離れたくないのですっ」
雪花と違い、鳴鈴は戦闘訓練を受けていない。それどころか、まともに重いものを持った経験すらない。そんな彼女が辛い行軍に耐えられるわけがなく、それは鳴鈴自身が痛いほどわかっていた。
「雪花さんだったら連れていってもらえたのでしょうね……そして、とっても殿下のお役に立ったことでしょう」
ぷいと飛龍に背を向けた鳴鈴は、すぐにそんなつまらないことを言った自分を恥じた。
それでも、考えずにはいられない。
(雪花さんが生きていたら、殿下はもっともっと、幸せだったのに)
何もできない、無力な自分などではなく、完全無欠の雪花が生きていたなら。
考えれば考えるほど、悲しくなってくる。
座ったままうつむいていると、背後から飛龍の大きなため息が聞こえた。
(ああ、呆れていらっしゃる)
当たり前だと思いながら、やっぱり悲しかった。
自分のバカさ加減に打ちのめされていると、ふわりと背後から長い腕が伸びてきた。