恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜

「生きているわ。飛龍さまよ」

喜ぶ鳴鈴に、李翔も破顔してうなずいた。彼の馬に括りつけていた縄を手近で丈夫そうな木に結ぶ。呼子の音に反応し、清張城の兵士も集まってきていた。

「まず誰か様子を見に行って……」

「はいっ」

もちろん、縄を使って崖を降りた経験などない鳴鈴が一番に手を上げた。

「徐妃さま、それはいくらなんでも」

「やめてくださいよ。あなたに怪我をさせたら、俺が二兄に殺されちまう」

兵士や李翔に止められるが、鳴鈴はさっさと自分の腰に縄を巻き、端にいた兵士にそれを持つように促していた。

「ああもう! 徐妃さまは二兄が好きすぎますよ!」

止めることを諦めた李翔は、せめてもと、鳴鈴の腰の縄を結び直した。皮の手袋を貸してもらい、鳴鈴はゆっくりと崖を降りた。

兵士たちのおかげで、途中何度も足を踏み外した鳴鈴だが、なんとか崖の下に着くことができた。

「飛龍さま!」

果たして、飛龍は鳴鈴の着地地点のすぐそばに横たわっていた。

肩には折れた矢が突き刺さったままだ。まぶたは固く閉じられ、美しい顔に泥や血がこびりついていた。痛々しい姿に息を飲む。

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