恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
鳴鈴たちが星稜王府に帰ってひと月、飛龍の傷は奇跡的に完治した。
ほとんど元通りになった腕で、稽古と言って庭で戟を振り回す彼を、鳴鈴は廊下に座り、眩しい思いで見つめる。
むき出しになった上半身に、強い日差しが降りそそぐ。北の星稜の地にも、夏がやってきていた。
「殿下、お妃さま、主上からのお知らせでございます」
二人のいる庭にやってきたのは緑礼だ。例の事件のあと、彼女は王府じゅうの男性に求婚されているという。
「まだ男装を続けるの? 私は女装でも構わないのに」
鳴鈴が言うと、緑礼は口をへの字に曲げる。
「この方が動きやすいので」
それだけ言って、皇帝からだという文を飛龍に渡すと、さっさと行ってしまった。
「照れているのね」
緑礼は自分の色恋沙汰となると、貝のごとく口を堅く閉ざしてしまう。いつか彼女も女性として幸せになってほしいと、鳴鈴は願っていた。
「ところで、なんと書いてあるのです?」
戟を置いて文を広げる飛龍に問う。彼はそれに目を通しながら、鳴鈴の隣に座った。
「皇后と皇太子の処分が決まった」
「えっ」
身を乗り出した鳴鈴の頭を、飛龍は優しくなでる。