恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
忘れていた。ただの親王でさえ、側妃を持つことが好ましいとされているのに、皇帝が正妃ひとりしか持たないとなると、周りが黙っているだろうか。
(これは大問題だわ!)
飛龍の出世は喜ばしいし、支えてあげたいと思う。けれど、彼が自分以外の女性を抱くなんて、想像もしたくない。
「どうしましょう……」
皇帝の命令を拒否することはできない。なんとかして外されるようにだらしない生活をし、戦に負けてみる?
そんなとんでもない作戦を真面目に考えている鳴鈴の手を、飛龍が不意につかんで引き寄せた。
「きゃっ」
転ぶように飛龍の胸に飛び込んだ鳴鈴を、彼は力強く抱きしめた。
「俺はお前だけがいい。他の女はいらない」
「飛龍さま……」
「お前が隣で笑っていて、たまに笛を聴かせてくれればそれでいいんだ」
飛龍の言葉は簡単に鳴鈴を舞い上がらせる。
彼の愛情を感じるたび、鳴鈴は胸がいっぱいになって、たちまち泣きそうになる。
飛龍となら、本気で餅を売り歩く庶人になってもいいと思う。しかし彼を餅屋にしておくのは、あまりにもったいない。
彼が皇帝になれば、この国はもっとよくなる。争いが少ない、平和な国に……。
「あ、そうだ!」
「ん?」
「子をたくさん残せばいいんでしょう? では私が、側妃のぶんまで産めばいいんです!」