恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「ええと……皇太子が廃位されたので、次の皇太子に……えっ、ええええ!」
そこには皇帝の直筆でこう書かれていた。
【星稜王・向飛龍を立太子する。ついては儀式を行うゆえ、妃とともに参内すべし。日程は……】
鳴鈴も遅ればせながら立ち上がった。
(飛龍さまが、皇太子に!)
手紙を持って自室に駆け込む。と、飛龍が牀榻の縁に座っていた。
「こ、こ、これ……」
鳴鈴が近づくと、飛龍はくしゃくしゃと頭を掻いた。
「立太子は俺に子ができたらじゃなかったのか?」
「長いこと皇太子不在では、周りが黙っていないということでしょうか」
「李翔でいいじゃないか。どうして俺なんだ」
苛立つ飛龍は、だだをこねる子供のようだ。
「……私は、飛龍さまでもいいと思いますよ」
「なんだと?」
「飛龍さまなら、きっと優れた皇帝になられるでしょう。優しくて、強くて、美しい主上!」
おだてたつもりはなく、本心から出た言葉だった。しかし飛龍はじとっと鳴鈴をにらんだ。
「政の重責もごめんだが、俺にはもうひとつ拒否したい理由がある」
「もうひとつの理由?」
「皇帝はより多くの子を残すため、側妃を娶らなきゃならない」
「あっ」